哲さんは、ロボを連れて、啓二さんの仕事部屋に向かう途中 開発環境を入手しよう
高校時代からの付き合いを思い出していた。啓二さんは、音
に対する感覚が鋭敏で、英語の発音を正確に聞き分け将来
は、通訳になるのだと言っていたのが、何を間違ったか理系
に志望変更して、工学系の学科に入ってしまった。成績は中
の上程度だったのが、理系志望にした途端上位に入り、その
勢いで大学に合格し、忙しい日々を送っていたようだった。
大学では、アマチュア無線に凝って、関連するグッズを自作
しては、楽しんでいた。それが何を血迷ったか、プログラム
を作りはじめて今日に至っている。
哲 :こんちは。マイコンは届いたかいなあ。 啓二:まだ、届いていない。そのうち来るから、心配するなって。 哲 :そうか、ところで、今日は何をするんだ。 啓二:78kの開発環境をダウンロードしようか。 結構使えるソフトのようだから。 哲 :マイコンの開発環境というと、VC++とかVBの開発 環境と大きく違うのかい。 啓二:最近は、ほとんど見た目は同じだよ。ときどき、どっちの 環境で使っているのかわからなくなることもある。 哲 :そうなんだ。で、どこからダウンロードするんだ。 啓二:NECエレクトロニクスのホームページに入って、ユーザー 登録するんだ。コンピュータを貸すから、自分で登録して、 ダウンロードしろよ。 (デスクトップマシンの前にある椅子に哲さんが腰を下ろす) 哲 :おっと、NECエレクトロニクスのホームページにいるんだ。 http://www.necel.com/micro/product/allflash/index.html 開発ルールダウンロードをクリックしてっと。なになに、ダウン ロードするには、必要事項を記入くださいって。 名前、Eメールアドレス、所属、電話番号等を入れてと。 何故、Eメールアドレスが必要なんだろう。 啓二:ダウンロードした開発環境をWindowsマシンにインストールするときに キーが必要なんだ。そのキーを入力しないとインストールできない。 最近は、そういうのが多いんだ。メールでキーが送られてくる。 哲 :そうか。で、Eメールアドレスを入れてっと。 ありゃ、たくさん並んでいて、どれをダウンロードしたらいいのか わからないぞ。 啓二:どれ、Applilet、Assembler、C compiler、Linker、Simulator、Downloadまで 1個1個ダウンロードすればよい。78K0S/KA関係のソフト一式だぞ。 哲 :げげっ、一括してまとめておいてほしいなあ。 1個1個だと面倒だよ。そうなんだ。 啓二:そう言うなって。個別にしておいた方が、バグやアップグレードするときに 便利だから、こうしているんだから。 哲 :全部指定してダウンロード開始っと。5分くらいかかりそうだなあ。 啓二:全部ダウンロードしたら、コンパクトフラッシュに吸い上げてやるから 自宅や仕事場で解凍してインストールしろよ。 哲 :えっ、このマシンにインストールしては駄目かい。 啓二:78KFX2の環境をインストールしてあるんで、上書きされると困るんだ。 ここで作業するときは、Windows98のノートを貸してやるよ。 哲 :おお、そういうことか。という間に全部ダウンロードしたようだ。 啓二:よし、コンパクトフラッシュに吸い上げるか。16メガもあれば充分だから これを使うか。SunDiskの古いの。 哲 :モノ持ちのいい奴だなあ。もうこのコンパクトフラッシュ売ってないぞ。 何に使ったんだ。デジカメか。 啓二:いいや、組込みLinuxのブート用に利用したんだ。 哲 :お前、Linuxにまで手を出しているのか。 啓二:仕事で使ったんだよ。仕事を選んでいる余裕はないの。 哲 :案外、いろいろなことが出来るんで、楽しんでいるな。 啓二:でもないさ。10の仕事があって、1が楽しく感じられる程度。 最近は、ほとんど、楽しくないけれど。 哲 :食べていくには、何とやらってか。 啓二:そういうこと。クライアントの中には、トンでもない担当者がいるし。 自分の思った仕様を言えば、明日にでもモノが出来ていると勘違いして いるのも多いし。 哲 :まったくだ。自分の頭の中にあることを、他人が簡単に理解できるはず ないのに、それを要求するんだわなあ。 啓二:それに極端に値引き要求して仕事を出してやっているという御仁。 この前も、他を当たってくれって断ってしまった。 哲 :それが出来ればなあ。 啓二:声をあげないと、何も改善されないからなあ。 今日は、ここまでにしようぜ。 哲 :うん、そうだな。 啓二:じゃあ、コンパクトフラッシュは、来週返してくれよ。 哲 :16メガなんて、何に使うんだよ。 啓二:16メガは、組込み分野では、巨大容量なの。 データロガーに利用できるから、返しとくれ。