電池で簡単な電源回路をつくる

啓二さんから、マイコンが来たとメールが入り、いそいそと
出かける哲さん。愛犬の散歩なのに、妙に嬉しそうだと感じ
始めた哲さんの妻、瑞希(ミズキ)さん。しかも、1時間と
長い散歩も気になる。何か企んでいるなとは思っても、犬の
散歩はしてくるので、表立って反対も言えず、たまには2人
でと言っても、疲れているだろうと丸め込まれてしまう。
そんなやりとりをして、今日も、夫を送り出す。
哲  :こんちは。マイコンが届いたというので、少し早めに来たちゃったぜ。
啓二:おお、届いているよ。結構小さい。ICソケットに挿せる程度は、
      半田付けしておいた。


哲  :ありゃ、半田付けを楽しみにしていたのに。
啓二:大丈夫だって、3枚のうちの1枚だから、2枚は半田付けできる。
      それにこれだけじゃ、動かせないから。
哲  :えー、そうなのか。
啓二:Windowsマシンじゃないんだから。電源を作ったり、マザーボード
      を半田付けしないとな。
哲  :そうか、電源がいるんだ。¥4000くらいか。
啓二:ワンチップマイコンの電源は、単3の乾電池を4本程度で充分さ。
      電池ホルダーと配線材料が必要だけれど、まあ、¥200程度で
      手に入る。単3のアルカリ乾電池は、¥100ショップで買えば
      電源全体でも¥400程度ですむ。
哲  :Windowsマシンの1/10かよ。
啓二:そういうこと。ワンチップマイコンは、経済的だろう。
      本格的な電源は、そのうち作るとして、まずは、この簡易
      電源で充分だ。回路図は、これな。


哲  :えーっと、電池ホルダーに電池が4本、そしてダイオードとLED
      に抵抗か。案外少ないんだなあ。でも、ダイオードは不要じゃないのか。
啓二:転ばぬ先の杖ってやつさ。プラスとマイナスを間違えて接続すると
      マイコンが壊れる。逆に接続しても、電流が流れないので、壊れない
      ようにしているの。
哲  :そうなんだ。子供なんかだと、間違えてつけちゃうかも知れないし。
啓二:お前、高校のときの文化祭で、照明の電源を逆に接続して、
      停電させたこと忘れたのか。大人だって、間違えて接続して
      しまうことがあるんだ。その対策だ。電子・電気回路を扱う
      技術者は、この程度の気配りは、常にやっているんだよ。
      さっさと、半田付けしろい。
      あっと、ダイオードとLEDを半田付けする基板はこれな。


哲  :みみっちい基板だな。なんかの余りだろう、これ。
啓二:ただなんだから文句いうなよ。あまり大きいと使い難いんだよ。
      それに、ロボットを作るようなときは、こんな小さい基板をたくさん
      使うこともあるんで、半田付けの練習だ。
哲  :へいへい。それでは、半田付けしましょうかと。
      おい、LEDって極性あったんじゃないか。
啓二:あるよ。電池と抵抗は半田付けして、抵抗と電池の間にLEDを
      入れて光るかどうかで判断する。それからLEDを半田付けだ。
哲  :おお、そういう風にやるのか。データシートなんて不要だな。
啓二:少しは、頭を使えよ。頭を使わないから、そうやって太るんだぞ。
      頭を働かせると、ブドウ糖が消費されるので、太りにくくなるそう。
哲  :いいこと聞いた。瑞希に教えてやろう。高いダイエット食品ばかり
      買うんだ。今更、無駄と言うと、むくれるし。そうか、頭を使うと
      痩せられると言って、あの金をこっちに。あっち!
啓二:半田付けしている最中は集中しろよ。火傷したり、火事になるぞ。
哲  :ああ、熱かった。子供にも、注意してやらせないと。
啓二:無駄だって。お前の遺伝子を引き継いでいるんだから。
哲  :言いやがったなあ。このバツイチ。
啓二:だから、集中しろって。電池ホルダーを溶かしてしまっただろうが。
哲  :ああ、やっちまった。
啓二:まったく。人の話を聞いていないんだから。
      そんなことじゃ、ICの半田付けのときに、ICを壊してしまうぞ。
哲  :わかりましたよ。できた。
啓二:どれどれ、電池を入れると、LEDが光るな。で、電圧は
      5Vちょっとか。よし、できたようだな。今日は、これまで。
哲  :ロボもAiboに興味がわくのか、寄っていくぞ。
啓二:昨日ジンギスカンをしたんで、そのときの匂いがついているだろう。
哲  :羨ましい。
啓二:ジンギスカンは、ヘルシーな肉と最近評判なんだぞ。
      昨日の残りがあるから、焼いて食べるか。
哲  :賛成。ビール買ってくる。
啓二:お前、ビールばかり飲んでいると、マイコンに使う金がなくなるぞ。
      半導体部品は高くはないが、コネクタとかスイッチって缶ビールで
      1本程度の値段はするんだから。
哲  :じゃあ、第3のビールにする。
啓二:懲りない奴。

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