簡単なツールをつくる

前回、電池で電源回路を作った哲さん。慣れない半田付けに
閉口しながらも、何とかやり遂げて、達成感で愛犬ロボと家
まで、スキップしながら戻ったのでした。そのスキップを、
奥さんである瑞希さんに見られてしまいました。瑞希さんは
怪しいと疑っています。浮気でもしているのかと、今日は後
をつけて来ました。そんなこととは夢にも思わない哲さんは
啓二さんの仕事部屋の前で、料理教室の女性と挨拶を交わし
部屋に入っていきました。これが、後で修羅場を見る原因に
なるとは、その時は知る由もなかったのです。
哲  :こんちは。いい天気だぞ。
啓二:ああ、そうだな。入れよ。
哲  :今日は簡単なツールを作ると先週聞いたが、何を作るんだ。
啓二:後々まで使える自作ツールを作るんだよ。
      みの虫クリップワイヤ、導通チェッカーとLED極性チェッカーだ。
哲  :みの虫クリップワイヤは、何に利用するのかな。
啓二:電源と部品を接続して、極性をチェックしたり、半田付けの不良な部分
      を、応急補修したりするときに使う。赤、黒、白、黄の4本を作り手元
      においておくと便利だよ。
      以前作った手順書があるから、見ながら、半田付けしてみてよ。
哲  :すぐにできそうだな。
啓二:半田付けは、電子回路を作成するときの基本なので、ゆっくり
      着実にやろうぜ。ここで、手を抜くと、後での修正が大変だから。
      (4本を半田付けして、ほっとしている哲さん)
哲  :できたぞ。


啓二:どれどれ、チェックしようか。テスターを抵抗レンジにして、抵抗
      をはかると。0Ω付近であれば、よいけれどね。
      4本全部を直列に接続して、抵抗をチェック。
      大丈夫のようだな。お次は、導通チェッカーだ。
哲  :難しいのか。
啓二:いや、そうでもないよ。加工に手間がかかるだけで、
      回路自体は簡単さ。
      まずは、導通チェッカーの回路図を見てくれ。


哲  :単3乾電池1本にブザーとテスト棒だけか。
啓二:そう。自作ツールは、なるべく短時間で作れることが大切。
      そして、長く使えることが必要なんだ。安いことも必要だな。
哲  :回路は簡単な割に、部品が多いな。
      電池ホルダー、ケース、ブザー、コネクタ、テスト棒か。
      どうやって使うんだ。
啓二:半田付けしたところが、電気的につながっているかどうか
      音でわかるようにするんだ。つながっていれば、ブザーが
      なる。
哲  :じゃあ、作るか。
      (半田付けしたり、ケースに穴を開けたりして、完成)
啓二:電池を入れて、テスト棒をつけて音が鳴ったからできたなあ。
      次は、LED極性チェッカーだ。回路図は、これ。


      青以外のLEDは、大体3V程度電圧を与えて、10mAほど
      の電流を流せば光る。そこで、電池と電流制限抵抗で、LED
      に10mAほど電流を流して、光るときの接続を見つける。
哲  :電流制限抵抗の値で、どうやって計算するんだ。
啓二:まず、LEDに電流を流すと、だいたい2V程度の電圧が発生する。
      これを順方向電圧Vfと呼ぶ。電源電圧Vpと流したい電流値をI
      とすれば、オームの法則で、電流制限抵抗の値は、次式で求められる。
         Vp−Vf=R×I
      Vp=5V、Vf=2V、I=10mAとすると、R=300Ωとなる。
      300Ωだと、LEDの発光輝度が高く、電池の消耗が
      激しいので、470Ω程度にしておく。
哲  :何でこんな中途半端な数値の抵抗を使うのだ。
啓二:それは、誤差が最少になるように、隣合う抵抗の値を決めたからさ。
      誤差の範囲により、E6系列、E12系列、E24系列、E96系列
      とある。抵抗、コイル、コンデンサは、E12系列の値を採用すると
      よいよ。
哲  :目的の抵抗値がないときは、どうするのさ。
啓二:直列、並列の接続をして、目的の抵抗値に作るの。
      そうそう、抵抗を使うときは、目的の抵抗値になったら、その抵抗
      の消費電力を計算しておこう。
哲  :何故そんなことをするんだ。
啓二:部品には、許容電力というのがあって、その電力を超えると破壊されて
      しまったり、発生する熱で燃えたりして、危険なんだ。で、許容電力の
      1/3程度になるようにしておく。
哲  :燃えて火事になんかなったら、えらいことだ。
啓二:そういうこと。今回は、2Vで10mAの電力消費なので、20mW。
      使う抵抗は、250mW品で、最大の許容電力の1/10なので燃える
      ことはない。だから、そのままでよい。
哲  :そのままで、よいって、駄目なときはどうするのかな。
啓二:複数の抵抗を組み合わせて(直列、並列接続をして)、各抵抗の許容電力
      の1/3程度になるようにする。また、許容電力の大きな抵抗を使うこと
      もある。
哲  :組み合わせの妙を追求するのか。
啓二:うん、じゃあ、やってみて。
      (10分ほどで完成)
哲  :できたよん。


啓二:導通チェッカーで接続をチェックしてね。
哲  :そうか、こういうときに使うのか。
啓二:LEDを渡すから、極性をチェックしてみて。
哲  :あれ、足が届かない。どうすりゃいいんだ。
啓二:そういうときに、みの虫クリップケーブルを使うの。
哲  :ああ、そうか。こういうときのためか。
啓二:使い道はいろいろある。自分で工夫することだ。
      じゃあ、ここまでにしよう。

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