ブザーを鳴らしてみる
先週とうとうLEDを点灯させることに成功した哲さん。
今日も、張りきって愛犬ロボを連れて、啓二さんの仕事場
へやってきた。何やら袋を手にもっている。実は、RGB
のLEDを10個ほど買ってきて、イルミネーション作成
を考えたらしい。1個¥200のLEDを10個も買って
きたのには、訳があるようだ。
哲 :おーい、今日は、少し作業させてくれ。
啓二:何だよ、いきなり。
哲 :実は、来週の水曜日は、瑞希の誕生日なんだ。
それで、プレゼント買えないから、せめてイルミネーション
でもって考えてさ。¥2000ほどしか捻出できないから
心に残るプレゼントと思って。
啓二:ほう、殊勝なこと言うじゃないか。どういう風の吹き回しだ。
哲 :いや、零細企業の経営者で、いろいろと苦労をかけているから
せめてもの罪滅ぼしをと考えてさ。
啓二:そうか。なら、作業台を貸してやる。使えよ。
抵抗は、1kΩのままでいいだろう。輝度を合わせることも
ないから。ただし、ICを3個程度つけてやるから、その
スペースを空けておけよ。点灯処理をして、星のまたたきの
ようにしてやるからさ。
哲 :わかった。一度に全部光らせるのも、芸がないかなって
思っていたんだ。
啓二:そんなことだろうと思ってたよ。まあ、LEDと抵抗の
半田付けを済ませてしまえよ。
(30分ほど、ゴソゴソやって、終わったらしい)
哲 :終わった。疲れた。
啓二:どれどれ、チェックしてやるか。
どうやら、全部OKのようだな。
哲 :ところで、ICで何をするんだ。
啓二:カウンタと発振器で、まず0から7までカウントした出力
をつくる。そのカウント値をデコードして、LEDに抵抗
を介してアノードに接続する。それで点滅するようになる。
哲 :それじゃ、周期的になるんで、点滅の仕方が読めちゃう
んじゃないか。
啓二:デコードした出力を適当に配線するんだよ。それで、周期的
な点滅をすこし乱雑にしてやるんだ。これで星が瞬くような
効果がでる。ちょっと待ってな、デコードまでの半田付けを
してしまうから。
(20分ほどで、半田付けが終わる)
哲 :デコーダの出力を、適当に、抵抗へと半田付けすればいいんだな。
啓二:そうだよ。やってくれい。
(10分ほどで、半田付けが終わる)
哲 :できたぞ。テストしてくれ。
啓二:ああ、いいよ。5V電源を接続するだけ。
哲 :おお、イルミネーションになっている。
案外簡単なんだなあ。これで、プレゼントができるよ。
啓二:部屋を暗くして、ワインを飲むときにも使えるし、クリスマス
ツリーにも使えるなあ。今年はこれでいいが、来年はプラネタ
リウムに連れていくってのもいいぞ。
大平貴人っていうプラネタリウムにとりつかれた技術者が作った
すごいのがあるんだ。本当に満天の星空が見える。
自分でも、キットで作れるぞ。学研の「大人の科学」に、
シリーズのひとつとして入ったんだ。
哲 :情報をサンキュウ。さて、ブザーの鳴らすための半田付けが
できなくなったなあ。
啓二:でもないさ。
みの虫クリップワイヤで、ブザーの2本の線をカウンタ出力や
デコーダ出力につないでみなよ。1本は0Vにして、もう1本
を、カウンタやデコーダ出力にさ。
哲 :おう、音がなっている。
触るところ変えてみると音もかわるなあ。
啓二:カウンタは、実は周波数を変化させていることに相当するんだ。
1オクターブ上は、周波数を2倍にすること、1オクターブ下
は周波数を半分にすることになる。今回は、バイナリカウンタ
を使ったんで、元の周波数の半分、4分の1、8分の1とカウ
ンタで出力していることになるんだ。
哲 :へえ、そうなんだ。面白いなあ。
なら、音階も作ることができるなあ。
啓二:その通り。でも、イルミネーションで利用したカウンタは
2のn乗の変化しかさせられないから、メロディを奏でる
ようにはできない。
でも、警報音や合図には利用できるのさ。
マイコンでメロディを出すことも、いつかやってみよう。
哲 :電子回路の出力にLEDをつけたり、ブザーをつけたり
すると、同じものが、イルミネーションだったり、警報
音になったりするのか。楽しいなあ。
啓二:だろう。このようなことを教えられない教師は給料泥棒
なのさ。まあ、教育学部を出てきた人間には無理かも。
ハードウエアを扱っている技術者やプログラマの方が子供
を引きつけて、実践に役立つ知識と知恵を与えられるかも
知れない。
哲 :ブザーを半田付けするけど、すぐ終わりそうだなあ。
固定用のビスを入れる孔が必要だ。どうしよう。
啓二:100円ショップで買ってきた精密ドリルで基板に孔を
あけるのさ。ピンバイスを使ってもいいけど。
哲 :ここにあるのか。
啓二:当然。ほらよ。
(半田付けと孔あけがすぐ終わる)
哲 :ハードウエアって、できて行く過程が見えるから
達成感があるな。
啓二:達成感が、充実感になることもある。だから、この
仕事から離れられない。
哲 :Aiboにイルミネーションを見せてやるか。
あれ、赤だけになったときに逃げ出した。
啓二:赤は、火と認識するらしいんだ。だから危険と判断して
その場所から離れていく。
哲 :へえ、よく観察してプログラムしているなあ。
啓二:でも、犬は本能で火から逃げるわけでなくて、学習している
ようなんだ。ウチにいた犬は、蝋燭の火を舐めようとして、
鼻先を火傷してから、火に近づかないようになった。
線香花火の火種に蝋燭をつけていたんだ。横にいた犬は、
産まれたばかりで子犬だったから、何でも舐めて認識しよう
として火を舐めた。それで鼻先を火傷した。それで、学習だ。
哲 :ロボットを作ることは、生物を知ることなのか。
啓二:そういうこと。
哲 :じゃ、帰る。
啓二:おーい、イルミネーション忘れてるぞ。