先週、ブザーを鳴らすところまで、漕ぎつけた哲さん。 スイッチを使ってみよう
今日は何ができるかと、期待するようになってきて、自分
でも驚いている。愛犬ロボが暑さでバテ気味で、スローな
足取りで、啓二さんの仕事場にやってきた。ロボに、簡易
冷房機器を使わせてもらおうと、引き紐を手繰っていると
ドアが開いて、啓二さんが顔を出した。
哲 :おっと、びっくりしたなあ。 啓二:ちょっと買い物に行ってくるから、入っていてくれ。 哲 :それは構わないが、あの簡易冷房機器を使えるかい。 啓二:ああ、ポンプの電源スイッチを入れると、動くように してある。じゃあ、ちょっと行ってくる。 哲 :時間がないんだから、早く戻ってこいよ。 さあ、ロボは簡易冷房の敷物においてと。 (10分くらいして、啓二さんが戻ってきた) 啓二:待たせたな。熱収縮チューブを、ホームセンターで買ってきたんだ。 哲 :何に使うんだよ、そんなもの。 啓二:線と線を半田付けした箇所が、剥き出しだと危ないんだよ。 それで、熱収縮チューブで被覆をつくるのさ。 哲 :へえ、結構細かいところに、こだわるんだな。 啓二:電気を扱うんだから、一歩間違えると危険なんだ。 少しでも、危険と判断されるところは、なくすに こしたことはない。 哲 :そんなもんかなあ。ところで、今日は何をするんだ。 啓二:スイッチの半田付けだ。 タクトスイッチを2個、片側だけを0Vのラインに 半田付けする。 4本ピンが出ていて、2本ずつ組みになっている。 押せば、導通するようになっている。 哲 :どうやって、その導通を判断するんだよ。 啓二:ツールとして、導通チェッカーを作ったろう。 あれを使うのさ。 哲 :ああ、そうだった。 (導通チェッカーで、確認する) わかったぞい。 啓二:じゃあ、半田付けしろよ。 (3分ほどで、半田付けが終わる) 哲 :できたぞ、簡単だい、こんなの。 啓二:じゃあ、テストしてみろよ。 哲 :えっ、どうやればいいんだ。 啓二:スイッチを押すと、導通するんだろう。 ブザーかLEDにスイッチの片方をつないで、押してみれば。 哲 :なるほど。ここにあるハードだけでテストするってか。 でも、どうやって接続するんだ。 啓二:みの虫クリップワイヤがあるだろう。 哲 :ああ、そうか。最初にツールを作ったのは、こういうときの ことを見越していたのか。 啓二:そういうこと。 哲 :LEDのカソードと、スイッチをつけてと。 押してみる。点かないぞ。 啓二:LEDのアノードにつけている抵抗に電源の+側を接続しない と電流が流れないだろう。基本に戻って考えろよ。 哲 :言われてみれば、そうだなあ。 電源の+側も、みの虫クリップワイヤでつけてと。 押してみる。おー、点いた。 啓二:1個目はテスト終わり。2個あるからなあ。 もう1個をテストしろよ。 哲 :ほいほいと。みの虫クリップワイヤをつけかえてっと。 押してみる。点いた、点いた。 啓二:よし、終了だ。 じゃあ、マイコンに各部品を半田付けしよう。 まずは、20ピンのICソケットを半田付けする。 哲 :マイコンには、直接半田付けしないのか。 啓二:してもいいけれど、そのマイコンは、この基板に固定されて 他には使えないだろう。それじゃ、不便だからICソケット で脱着できるようにしておくの。 哲 :そうか。考えているんだなあ。 啓二:常識だよ。 哲 :20ピンのICソケットの半田付けが終わったぞ。 これから、どうやって、部品と接続するんだ。 啓二:LEDは、電流を流せるピンが必要だから、そういうピンを 選んで利用する。まあ、トランジスタを入れてしまえばOKだ。 スイッチは、外部割込みを使えるようにするピンにして、こうだ。 ブザーは、出力専用ピンがあるから、P130と接続。 哲 :おーい、部品が余ってしまうぞ。 お前、間違えて買わせたんじゃないのか。 啓二:いや、それは、今使わないだけで、後で半田付けするさ。 A/Dコンバータを使うときに、必要になるんだ。 じゃあ、この線を使って半田付けな。 哲 :あれ、被覆がついているじゃないか。 どうやって皮剥きするんだよ。 啓二:ワイヤストリッパーを使えばいいんだ。 径が刻まれているから、芯線を切らないサイズで、刃をあてて引っ張る。 それと、線には、色がついているだろう。電源の+側を赤、−側を黒、 信号は白か黄にしておくことだ。 哲 :おっ、スルリと剥けた。こりゃ、楽だ。 でも、何で、色を使い分けるんだ。 啓二:動かなかったり、壊れたときに、判断しやすいようにさ。 自分で使う色を決めておくと、後で自分が助かることになる。 他人に半田付けをやってもらっても、色を決めておけば チェックしやすい。プログラムにコメントを入れておく のと同じかな。 哲 :へえー、そういう風にしているんだ。転ばぬ先の杖って いうだけじゃなくて、転んだときにどうするかを考えて いるのか。工具も揃えた方がいいのかな。 啓二:半田付けや工作するときには、ある程度の工具は必要さ。 最近は、100円ショップでも入手できるけれど、手に 馴染むような工具は、はやり専門メーカのを買った方がいい。 哲 :工具にも、ブランドがあるのか。 啓二:ああ、あるよ。だいたい宝山工具の製品を買っておけば、間違いないよ。 哲 :瑞希は、グッチだエルメスだと高いブランド品を欲しがるのよ。 子供は、アディダスの何とかと言っているし。 こっちは、ユニクロで我慢しているのに。 啓二:宝山の工具は、高くても¥1000程度で手に入るから、グッチ やエルメスよりもはるかに安いぞ。ニッパー、ラジオペンチ、 ワイヤストリッパーは、全部揃えても¥5000でお釣りが来る。 ピンセットは、先の形状が異なるのを3本ほど購入するとよい。 哲 :工具も、結構必要なんだな。 子供のために揃えると、出費がかさむなあ。 啓二:中学校に通っているなら、理科か生活科の先生に頼んで、学校の 工具を使わせてもらえばいい。最近の親は、学校の賢い利用方法 も知らないのかよ。 哲 :確かになあ。受験勉強させるだけが、学校じゃないもんなあ。 先生とも知合いになっておけば、何かと便利だし。 啓二:そういうこと。ほれ、早く半田付けしろよ。 哲 :そうだった。でも、ロボが涼んでいるからゆっくりやるさ。 啓二:犬をだしにして、楽しんでやがんの。