時計にタイマー機能をつける

ステートマシンを使い、マルチタスク処理を実現する方法を
しった哲さん。哲二さんから出された例題を、仕事の合間に
見直しながら、1週間を過ごしました。今日は、どんな話が
出てくるのかと思いながら、愛犬ロボと歩いていると、道の
街路樹は、徐々に色を変えているのがわかります。日々の糧
のために、仕事をこなしている自分を、客観的に見る時間が
ないことに気がつきました。啓二さんの部屋に差し込む夕日
が入る時刻が、だんだん早くなっているなと思いつつ、今日
も部屋のノブを回します。
哲  :こんちは。日暮れが早くなってきたよな。
啓二:ああ、そうだな。もう、半年近く、ここに通っているよな。
哲  :もう、そんなになるか。そろそろ、時計を完成させたい。
啓二:半田付けは、残しているが、これまでやってきた内容で、
      充分できるさ。
哲  :ひとつ要望があるんだ。タイマー機能をつけるのは、いいが
      指定時刻でオン、次の指定時刻でオフという機能だけだ。
      指定時刻でオフ、次の指定時刻でオンという処理もほしい。
      ソフトウエアならば、ピンをもうひとつ利用して、反転した
      値を出力すればいい。でも、ピンに余裕がないから、どうした
      ものかと思ってさ。
啓二:そんなの、簡単。1個トランジスタをつけてしまえば、解決だ。
哲  :すぐにできそうだな。
啓二:うん。こんな回路で、充分だ。


哲  :トランジスタって、ICがあるので、使わないと思って
      いたんだが、そうでもないんだ。
啓二:そうだ。トランジスタは、胡椒みたいで、プロが使うと、
      思いがけない効果を発揮するのさ。俺たちと同年代か上
      のハードウエア技術者は、こんな使い方を簡単にやって
      のけるが、最近の若いのは、パニックになってしまう。
哲  :そうだよな。この前なんか、こういうAPIがないから
      実現できませんと平気でいいやがるの。ないなら、自作
      してしまえばいいのにさ。まったく、もう。
啓二:与えられることに慣れ過ぎて、作り出すと能力が衰えて
      いるか、訓練されていないためだな。そうだ、タイマー
      動作中に、LEDが光っているようにもしておくか。
哲  :タイマー動作中には、LEDを点滅する仕様だから不要
      だと思うけれどなあ。
啓二:出力が2つあるんだ。どちらが、ON状態になっているか
      見分けがつくなら、それでいいが。
哲  :あっと、そういうことか。確かに、どちらが導通かは、
      表示してくれないと、不便だな。テプラで、わかるよう
      に印をつけても、本当にいいかは、わからないものな。
      よし、タイマー動作中オンかオフのどちらかを表示する
      LEDをつけよう。
啓二:じゃあ、こんな回路だな。


      LEDを、78kがHを出力したならば、消灯する。
      Lを出力したら点灯する。
哲  :これで、動作がわかるわけか。タイマー期間中に点灯
      するとON出力で、消灯するとOFF出力か。
      こうしてみると、ICに頼らないでも、結構いろいろ
      と出来るんだなあ。
啓二:そうだなあ。でも、応用できるには、それなりトランジスタ
      の原理を理解していないと、難しい。やはり、基本は大事だ。
哲  :じゃあ、トランジスタについて、少し教えてくれよ。
啓二:まず、トランジスタには、2種類ある。
      バイポーラ型とFET型の2種類だ。
      バイポーラ型は、電流入力で出力電流を制御する。
      FET型は、電圧入力で出力電流を制御する。
哲  :へえ、動作の仕方で2種類あるんだ。
啓二:動作原理は、FET型の方が簡単なんだ。チャネルという
      電流の流れ道の径を、電圧で変化させるんだ。
      ホースに水を流して、途中を足で踏んづけて、水の勢いを
      変えて遊んだことがあるだろう。あの原理だ。
哲  :FETって、案外簡単な動作なんだな。
啓二:今、理科離れが問題になっているだろう。あれは、子供よりも
      先生側の問題なんだ。難しい内容を、身近にある簡単なものに
      置き換えて説明できない。高校時代を考えてみろよ。
      何故、こいつが先生できるんだっていうのが多いだろう。
哲  :確かになあ。文系で、偏差値も高くなく、遊んでいた奴ばかり
      が、今、先生で偉そうな顔しているもんな。
啓二:文系、理系は、さておき、難しいことを、難しく説明する
      ことは、誰にもできる。が、先生は、難しいことを、易しく
      説明できるような力量がないと駄目だな。
哲  :そういう、お前は、大学や専門学校では、どうなんだ。
啓二:教え方が、うまいかどうかはわからない。が、毎回、楽しめる
      小物を持参してみせている。そうしないと、興味がないから、
      すぐに飽きられるなあ。
哲  :やっぱり、米村デンジロウみたいなことをするのか。
啓二:たまに、やることはある。でも、同じことは、絶対しない。
      2番煎じなら、やらない方がいいから。
哲  :どんなときに、学生に見せるものが、ひらめくんだ。
啓二:そうだな。散歩しているときか、料理しているときかなあ。
      脱線はこのくらいで、バイポーラ型だ。
      日本では、4種類に、型番をつけて、売られている。
      2SAxxx、2SBxxx、2SCxxx、2SDxxxとね。


哲  :2Sってなんだ。整理、整頓か。
啓二:ああ、半導体の接合面の数だ。Sは、semiconductorで、
      半導体の意味。2は、接合面が2個で、3本足になる。
      A、BはPNP型、C、DはNPN型だ。
哲  :よく、そんなにスラスラ出てくるなあ。でも、同じ型で
      2種類必要になるのは、何故なんだ。
啓二:もっともな疑問だな。AとCは、高周波用、CとDは、
      低周波用と分類されている。プロは、そんなことを気に
      していないで、5種類くらいのトランジスタの使い方を
      マスターしていて、用途に応じて使い分けている。
哲  :ふーん。そう言えば、中学校の技術で、トランジスタ
      ラジオを作ったなあ。
啓二:多分、6石スーパーだ。今でも、売られているぞ。
      100円ショップの方が安いけれど。
哲  :そうなんだよな。でも、作っているとき、怪しげで、
      ちょっと興味が湧いたな。お前みたいに、持続しないで
      終わったけど。真空管のアンプならば、作ってみたい。
      ポワっと、灯りがついて、いい雰囲気がでるしなあ。
啓二:あれならば、奥さんも、許してくれるってか。
      真空管は、メンテナンスが大変なんだ。フィラメント
      が切れると、交換だしなあ。
哲  :でも、それが、味なのかも知れないし。瑞希に、言って
      みようかな。買っていいかって。
啓二:キットで、2万くらいかな。それなりの音を出してくれる
      キットは、7万程度かな。小遣い節約で、1年コースだな。
哲  :2万くらいなら、買うぞ。愛の冬休みの工作だとか、何とか
      言って、交渉してみる。
啓二:子供にかこつけたら、自宅で半田付けだぞ。
哲  :そうか。そうだよな。でも、愛を連れてくればいいんだ。
      家には、道具がないからとか言えばいい。よし、この手だ。
啓二:そうだ、タイマーの出力で、給餌を作るんだったなあ。
      AC100Vを制御しないと駄目だな。
哲  :そうだ。AC100Vをオン、オフするって難しいのか。
啓二:いや、難しくはないよ。リレーを使うか、トライアックを
      使ってしまえば、いい。回路は、こんなんだ。


哲  :どうかで見たような回路だな。そうだ、この前やった仕事
      で見たぞ。確か、時間が来たら、照明をオンオフする仕様
      だった。それで、マイコンをはさむから、シリアルで命令
      を送ってくれとか何とか言っていたな。
啓二:それじゃ、話が早い。マイコンの制御出力を、真ん中にある
      フォトダイアックに入れて、AC100V側のトライアック
      をオンオフするんだ。一度オンさせると、制御出力に、Lを
      与えるまで、AC100Vをコネクタに出し続ける。
哲  :この前の仕事では、業者がキットを使っていたな。知らないか。
啓二:ああ、知っているよ。¥350くらいだったと記憶している。
      2個買っても、¥700だな。
哲  :そんな程度か。ならば、キットを使うようにするよ。
啓二:その方がいいな。じゃあ、インターネットで手配しろよ。
      秋月電子通商のホームページで、代引き指定で発注する。
哲  :うん、やっておく。
啓二:78kのピン割当てをかくと、こんなんだな。


      よし、続きは、また来週だ。

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